「掛け捨ての生命保険は、何もなければお金が戻ってこないから損」
「貯蓄型なら保障を持ちながら将来のお金も準備できる」
「生命保険は年収の5倍くらいあれば安心」
生命保険を検討すると、このような説明を聞くことがあります。しかし、生命保険を選ぶときに、最初から「掛け捨てか、貯蓄型か」を決めるのはおすすめできません。
そもそも「掛け捨て型」「貯蓄型」は、生命保険を分かりやすく分類するときに使われる一般的な呼び方です。生命保険協会では、死亡保険は、一定期間を保障する「定期保険」と、生涯にわたり死亡を保障する「終身保険」という分類としています。(生命保険協会 生命保険の基本型・構成)
大切なのは、どちらが優れているかではなく、「何のために、いくらの保障を、いつまで必要としているのか」を先に決めることです。
掛け捨て型とは
一般に「掛け捨て型」と呼ばれる代表的な保険が定期保険です。定期保険は、契約時に定めた一定期間について死亡保障を持つ保険です。例えば、
- 子どもが独立するまで
- 住宅ローン返済期間中
- 現役で働いている期間
など、保障が必要な期間がある程度決まっている場合に利用しやすい仕組みです。(生命保険協会 主な個人保険商品の種類)
保険期間が終了すると原則として保障も終了するため、「支払った保険料が戻ってこない」という意味で掛け捨てと呼ばれることがあります。保険料は「貯蓄」ではなく、その期間の保障を得るための対価でもあります。保険金を受け取らなかったからといって、それだけで損だったと判断するのは適切ではありません。
貯蓄型とは
「貯蓄型保険」も法律上の一つの商品分類というより、解約返戻金や満期保険金など、保障以外の資金形成機能を持つ保険をまとめて呼ぶときによく使われる表現です。代表的なものには、
- 終身保険
- 養老保険
- 一部の個人年金保険
などがあります。終身保険は被保険者の生涯にわたり死亡保障が続く仕組みです。養老保険は、保険期間中に死亡した場合には死亡保険金、満期まで生存した場合には満期保険金を受け取る仕組みです。(生命保険協会 生命保険の基本型・構成)
ただし、「貯蓄型だから支払った保険料が必ず全額戻る」と考えるのは危険です。生命保険協会も、保険商品について、途中で解約した場合には支払った保険料より解約返戻金が少なくなる場合があると説明しています。(生命保険協会 主な個人保険商品の種類)
まず「保障」と「貯蓄」を分けて考える
生命保険選びで迷いやすい理由の一つが、「保障」と「資産形成」を同時に考えてしまうことです。
これを整理するには、まず、万一のときに必要なお金と、自分が将来使うために準備するお金を分けて考えることです。例えば、子どもが小さい家庭では、家計を支える人が死亡した場合に、子どもが独立するまでの生活費や教育費が不足する可能性があります。この場合は「一定期間に大きな保障が必要」という性質があります。
一方で、葬儀費用などのように年齢にかかわらず一定額を残したいのであれば、「一生涯の死亡保障」を検討する余地があります。
掛け捨て型が向いている人
次のような人は、定期保険などの掛け捨て型を検討しやすいでしょう。
一定期間だけ大きな保障が必要
子どもが独立するまでなど、保障が必要な期間が明確なケースです。
保障と資産形成を分けたい
死亡保障は生命保険、将来の資産形成は預貯金や投資など、目的ごとに金融商品を分けたい人です。
家計に占める保険料を抑えたい
保障を持つことで日々の家計が苦しくなっては、本来の目的と逆転してしまいます。
貯蓄型を検討しやすい人
一方で、次のようなケースでは終身保険なども選択肢になります。
一生涯の死亡保障を持ちたい
何歳で死亡しても一定の死亡保障を残したい場合です。
保障と将来資金を一つの契約で管理したい
複数の商品を管理するより、一つの契約で一定の保障と資金準備を行いたいという考え方です。ただし、途中解約時の返戻率や保険料を支払う期間などは必ず確認しましょう。
「掛け捨ては損」とは限らない
保険は、発生頻度は低くても自分だけでは負担しにくい経済的損失に備える仕組みです。保険事故が起こらなかった場合に保険金を受け取れないこと自体は、保険という仕組みの性質です。そのため、
「いくら戻ってくるか」だけで生命保険を評価しない
ことが重要です。
「貯蓄型なら得」とも限らない
貯蓄型の生命保険を見る場合には、受取金額だけでなく、
- 毎月の保険料
- 保険料払込期間
- 死亡保障額
- 解約返戻金
- 途中解約時の条件
- 資金を自由に使えるまでの期間
まで確認します。変額保険など、運用実績によって解約返戻金などが変動する保険もあります。
生命保険協会も、市場リスクのある保険商品では、解約返戻金に最低保証がない場合や各種費用が発生する場合があると説明しています。(生命保険協会 市場リスクを有する保険商品への加入にあたって留意すべき事項)
3つの質問で考えてみる
自分や家族に必要な保険を考えるには、以下の3つの観点で考えてみましょう。
1. 大きな保障はいつまで必要?
「子どもが22歳になるまで」など期限が明確なら、定期型を中心に考えやすくなります。
2. 一生涯残したい保障はある?
葬儀費用など一定の資金を残したいのであれば、終身型を検討する余地があります。
3. 保険料を長期間払い続けられる?
現在払えるかだけではなく、教育費の増加や収入減少があっても継続できるかを考えます。
自分だけで判断しにくい場合
自分や家族では、何が必要な保険なのか、どうしても判断が難しいということがあります。特に、
- 現在の保険を解約すべきか迷っている
- 複数の生命保険に加入している
- 必要な死亡保障額が分からない
- 定期保険と終身保険を組み合わせたい
- 家族構成が変わった
といった場合には、複数の商品を比較して考える方法があります。
生命保険では健康状態などによる告知が必要になる場合があり、過去の病歴や現在の健康状態によって加入できないケースもあります。(生命保険協会 消費者信用団体生命保険Q&A)そのため、現在の保険を先に解約するのではなく、新しい契約の成立可否も確認しながら進めることが重要です。
自分で保険商品を比較したい場合はこちらを参考にしみてください。
あるいは複数の保険会社が取り扱っており、必要な保険を相談できるサービスもあります。こちらも参考にするとよいでしょう。
まとめ
掛け捨て型と貯蓄型のどちらがいいかに、万人共通の答えはありません。最初に考えたいのは、
何のための保障か、いくら必要か、いつまで必要か、無理なく保険料を払えるかです。
商品名や返戻率を見る前に、自分が必要としている保障を決める。その後に複数の商品を比較するのが、生命保険選びの基本的な順番です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の生命保険商品への加入、解約、乗り換えを推奨するものではありません。遺族年金、税制、保険金、解約返戻金などの条件は、契約内容や時期、家族構成によって異なります。契約前には最新の公的制度、契約概要、注意喚起情報、設計書、約款をご確認ください。