賃貸か持ち家か?どちらが得か「住まいの5つの根」で考える

マネーの基本

「家賃を払い続けるくらいなら、家を買ったほうがよい」
「人口が減る日本で、住宅を買うのは危険だ」
住宅について調べると、このように正反対の意見が見つかります。

しかし、賃貸と持ち家のどちらが正解かは、全国共通の計算だけでは決まりません。同じ価格の住宅を選んでも、

  • 何年間住むのか
  • 転勤や転職の可能性があるか
  • 子どもの人数が変わるか
  • 売却しやすい地域か
  • 収入が減っても住宅費を払えるか
  • 自分の家を持つことに、どれほど価値を感じるか

によって結論は変わります。

マネーフォレストでは、賃貸と持ち家の違いを次のように考えます。

賃貸は「住み替えられる自由」を買う選択。
持ち家は「住む場所を固定できる安心」を買う選択。

どちらも住居費を払う点は同じですが、購入しているものが異なります。

この記事では、賃貸と持ち家の費用を比較したうえで、マネーフォレストが考える「住まいの5つの根」を使って、自分に合う選択を判断する方法を解説します。

結論|賃貸か持ち家かは「人生の変化」と「出口」で決まる

先に結論をまとめると、次のような人は賃貸と相性がよい傾向があります。

賃貸と相性がよい状態理由
今後10年以内に転職・転勤・移住の可能性がある住む場所を変更しやすい
結婚や出産などで必要な広さが変わりそう家族構成に合わせて住み替えられる
収入の変動が大きい家賃の低い住宅へ移る選択肢がある
住宅の修繕や管理を自分で負担したくない建物の基本的な管理は貸主側が担う
まとまった現金を手元に残したい頭金や購入諸費用を支払わずに済む

一方、次のような人は持ち家を検討しやすいでしょう。

持ち家と相性がよい状態理由
同じ地域に長期間住む予定がある購入時の費用を長期間で吸収しやすい
収入と生活防衛資金が安定している修繕や税金などの支出にも対応しやすい
間取りや設備を自分好みに変えたい所有者として自由度を確保できる
売却しやすい物件を選べる将来の住み替えに対応しやすい
住宅を所有する安心感を重視する家賃や契約更新への不安を減らせる

大切なのは、現在の家賃と住宅ローン返済額だけを比べないことです。比較するのは、住宅に関するすべての支出と将来その住宅をどう手放すかまで含めた「総住居コスト」です。

日本では約6割の住宅が持ち家

総務省の調査(総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査)によれば、日本の持ち家住宅率は60.9%、借家の割合は35.0%でした。持ち家住宅率は過去30年間、おおむね60%前後で推移しています。つまり、日本全体では持ち家が多数派ですが、多数派だから自分にも適しているとは限りません。

住宅は地域差の大きい資産です。同じ4,000万円の住宅でも、駅に近く売買が活発な地域のマンションと、人口減少が進む地域の郊外戸建てでは、将来の売却しやすさが異なります。

また、同じ人でも、20代では賃貸が適していて、40代では持ち家が適していることがあります。

賃貸派か持ち家派かを一生固定する必要はありません。

「家賃と住宅ローン返済額」だけを比べてはいけない

よくある比較は、次のようなものです。

現在の家賃が月13万円
住宅ローンの返済額も月13万円
それなら、最後に住宅が残る持ち家のほうが得

しかし、この比較には持ち家特有の費用が含まれていません。

国土交通省も、住宅購入には物件価格以外に、仲介手数料、住宅ローン関係費用、不動産取得税などの初期費用がかかり、住み続ける間にも火災保険や修繕など継続的な費用が発生すると案内しています。(出典:国土交通省住まリテ 住まいにはどんな費用がかかる?

住宅金融支援機構のフラット35でも、抵当権設定費用、融資手数料、物件検査手数料、火災保険料などは利用者の負担と明記されています。(出典:住宅金融支援機構 フラット35

持ち家の総住居コスト

持ち家では、少なくとも次の費用を考えます。

購入価格
+ 購入時の諸費用
+ 住宅ローンの利息
+ 固定資産税など
+ 火災・地震保険料
+ 管理費・修繕積立金
+ 室内設備や戸建ての修繕費
+ 売却時の費用
- 売却によって戻る金額
- 利用できた税制優遇

住宅ローンを完済しても、住宅費が完全にゼロになるわけではありません。税金、保険、管理、修繕などの支出は、その後も発生します。

賃貸の総住居コスト

賃貸の場合は次のように考えます。

毎月の家賃
+ 管理費・共益費
+ 更新料
+ 火災保険料
+ 引っ越し費用
+ 敷金から差し引かれる原状回復費用

賃貸では、長期間住んでも住宅そのものは手元に残りません。一方で、購入時の頭金や諸費用として使わなかった現金を、預貯金や投資に回せる可能性があります。

そのため、公平に比較するには、持ち家の売却価値だけでなく、賃貸を選んだ場合に残る現金の使い道も考える必要があります。

マネーフォレスト流「住まいの5つの根」

住宅は大きな木に似ています。

家を買うと、住む場所に深く根を張ることになります。根が安定していれば、持ち家は暮らしを支える大きな木になります。しかし、環境に合わない場所へ根を張ると、簡単には動けません。

ここで、持ち家を検討する前に、次の5つの「根」を確認してみましょう。

根の種類確認すること
時間の根同じ地域に何年間住む可能性があるか
現金の根購入後も十分な生活防衛資金が残るか
変化の根家族・仕事・健康の変化に対応できるか
出口の根売却・賃貸・住み替えが可能な物件か
幸福の根所有することで得られる満足があるか

1.時間の根

購入時や売却時には、さまざまな諸費用がかかります。短期間で売却すると、価格が下がっていなくても諸費用を回収できない可能性があります。

次の点を考えてみましょう。

  • 10年後も同じ地域で働いている可能性が高いか
  • 子どもの進学に合わせて転居する可能性はないか
  • 親の介護や実家への移住は考えられるか
  • 海外勤務や地方移住に興味はないか

未来を正確に予測する必要はありません。「変化が起きたとき、住宅が足かせにならないか」を考えることが重要です。

2.現金の根

住宅購入に頭金を入れすぎると、預貯金が急激に減ります。その直後に、

  • 病気や失業
  • 出産
  • 自動車の買い替え
  • 家電や給湯器の故障
  • 引っ越しや転職

などが重なる可能性もあります。

住宅を買えるかどうかは、頭金を払えるかではなく、頭金を払った後も生活を守れるかで判断しましょう。購入後に現金がほとんど残らないなら、まだ根を張る準備ができていない可能性があります。

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3.変化の根

家族の人数や働き方が変わると、必要な住宅も変わります。

夫婦2人に適した住宅が、子どもが2人になっても適しているとは限りません。在宅勤務が増えれば仕事部屋が必要になり、子どもが独立すれば広すぎる住宅になることもあります。

持ち家を選ぶ場合は、「現在の暮らしに最適な家」だけでなく、将来の変化にも対応できる間取りを考えます。

4.出口の根

持ち家を選ぶとき、入口である購入価格には多くの人が注目します。

しかし、本当に重要なのは出口です。

  • 将来売却できるか
  • 売るとしたら、どのような人が買うのか
  • 賃貸に出す需要があるか
  • 建物の管理状態は良好か
  • 災害リスクを説明できるか
  • 周辺人口や生活利便性は維持されそうか

「自分が気に入る物件」と「次の人も買いたくなる物件」は、必ずしも同じではありません。

持ち家を資産として考えるなら、購入前から売却相手を想像する必要があります。

5.幸福の根

住宅は金融商品ではなく、毎日使う生活の基盤です。

「庭で子どもと遊びたい」「ペットと暮らしたい」「壁を好きな色に変えたい」「音を気にせず楽器を演奏したい」など、持ち家でなければ実現しにくい希望もあります。

反対に、住宅の管理に時間を使いたくない人や、定期的に違う街へ住みたい人にとっては、賃貸の柔軟性が生活の満足度を高めます。

金額だけでは測れない価値も、判断から除外するべきではありません。

あなたはどちら向き?10点診断

次の5項目を、それぞれ0~2点で採点してみてください。

1.今後10年以上、同じ地域に住む可能性

  • 低い:0点
  • まだ分からない:1点
  • 高い:2点

2.購入費用を払った後の現金

  • 生活費3か月分未満:0点
  • 生活費3~6か月分程度:1点
  • 生活費6か月分以上に加え、住宅予備費もある:2点

3.家族構成と働き方の見通し

  • 大きく変わる可能性がある:0点
  • 一部不確定な要素がある:1点
  • ある程度固まっている:2点

4.検討物件の出口

  • 売却相手を想像しにくい:0点
  • 一定の需要はありそう:1点
  • 売却や賃貸の需要を具体的に確認できる:2点

5.所有することへの満足

  • 所有には特にこだわらない:0点
  • どちらでもよい:1点
  • 持ち家で実現したい暮らしが明確にある:2点

診断結果

合計点マネーフォレスト流の考え方
0~3点現時点では賃貸の柔軟性を優先しやすい
4~6点急いで決めず、賃貸と購入を具体的に比較する段階
7~10点持ち家を検討できる状態。ただし物件と予算の審査が必要

この診断は、持ち家を勧めたり、賃貸を否定したりするためのものではありません。

自分の生活に、どの程度まで根を張る準備があるかを整理するための編集上の目安です。

30年間の賃貸・持ち家を試算してみる

ここからは、架空の条件を使って30年間の総住居コストを比較します。

実際の結果は、住宅価格、金利、家賃、税金、修繕費、売却価格によって変わります。以下は「どの数字が結論を左右するのか」を理解するためのモデルケースです。

比較条件

賃貸の場合

  • 家賃:月14万円
  • 更新:2年ごとに家賃1か月分
  • 火災保険:年間2万円
  • 家賃の上昇と引っ越しは考慮しない

持ち家の場合

  • 物件価格:4,500万円
  • 頭金:450万円
  • 借入額:4,050万円
  • 返済期間:35年
  • 金利:年1.8%の固定として試算
  • 購入諸費用:315万円
  • 税金・保険・管理・修繕:平均年間43万円
  • 30年後に売却
  • 売却諸費用:売却額の3.5%と仮定
  • 住宅ローン控除は計算に含めない

30年間に支払う金額

項目賃貸持ち家
家賃・ローン返済約5,040万円約4,682万円
更新料・購入諸費用等約196万円約765万円
保険・税金・修繕等約60万円約1,290万円
売却前の合計支出約5,296万円約6,737万円

この段階だけを見ると、賃貸のほうが約1,441万円少なく見えます。

しかし、持ち家には30年後に売却できる住宅が残ります。一方、住宅ローンは約746万円残っている想定です。

30年後の売却価格で結果が変わる

30年後の売却価格持ち家の実質的な総住居コスト
1,500万円約6,035万円
約2,270万円約5,296万円
2,500万円約5,070万円
3,500万円約4,105万円

この試算では、30年後に約2,270万円で売却できれば、賃貸と持ち家の総住居コストがおおむね同じになります。

つまり、この条件で最大の分岐点になるのは、現在の家賃と毎月の返済額ではありません。

30年後に、その住宅をいくらで手放せるか。

これが結果を大きく左右します。

ただし、この試算には次の要素を含めていません。

  • 賃貸の家賃上昇
  • 引っ越し費用
  • 頭金や購入諸費用を運用した場合の利益
  • 金利の変化
  • 想定を上回る大規模修繕
  • 住宅ローン控除
  • 売却時の税金
  • 購入物件による管理費・修繕積立金の違い

一つの試算だけで「持ち家が得」「賃貸が得」と結論づけないことが重要です。

税制優遇だけを理由に家を買わない

2026年中に住宅ローンで一定の要件を満たす住宅を取得し、居住を開始した場合、住宅ローン控除を受けられる可能性があります。適用条件には、住宅の性能、床面積、所得、ローンの返済期間などがあり、初年度は原則として確定申告が必要です。給与所得者は、条件を満たせば2年目以降に年末調整で適用を受けられます。

住宅ローン控除は、住宅購入の負担を軽減する制度です。

しかし、税金が戻るからといって、必要以上に高い住宅を買えば、総支出は増えます。100万円の税負担を減らすために、1,000万円高い住宅を選ぶのでは本末転倒です。

税制優遇は購入判断の中心ではなく、条件が整った住宅を買った結果として利用するものと考えましょう。

持ち家を買う前の「三重ストレステスト」

住宅ローンの審査に通ることと、無理なく返済できることは同じではありません。マネーフォレストでは、購入前に次の三つの状況を想定します。

ストレス1:世帯収入が20%減る

病気、育児休業、転職、残業代の減少などにより、世帯収入が一時的に減った場合を考えます。

収入が20%減っても、

  • 住宅ローン
  • 税金
  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 教育費
  • 基本生活費

を払えるでしょうか。

ストレス2:住宅費が月3万円増える

変動金利の上昇、修繕積立金の増額、設備故障への積立などによって、住宅関係の負担が増える場合を想定します。

月々の返済額だけで家計を組まず、追加支出を吸収できる余白を残します。

ストレス3:突然100万円が必要になる

住宅の修繕、自動車の買い替え、家族の医療、介護などが重なったと仮定します。このとき、カードローンや投資資産の売却に頼らず、現金で対応できるでしょうか?

ここにあげた3つのストレス要因3つのうち1つでも家計が立ち行かなくなるなら、「物件価格を下げる」「頭金を減らして現金を残す」「購入時期を遅らせる」といった見直しが必要です。

賃貸を選ぶ場合にも老後への準備は必要

賃貸には住み替えやすいメリットがありますが、老後まで何も考えなくてよいわけではありません。高齢になると、収入、保証人、健康状態などを理由に、新しい賃貸住宅を探しにくくなる可能性があります。

この問題を背景に、住宅セーフティネット制度が整備され、2025年10月には改正住宅セーフティネット法が施行されました。国土交通省は、高齢者などの賃貸住宅への居住ニーズが高まる一方で、貸主側には家賃滞納や残置物処理などへの懸念があると説明しています。

賃貸を長く続ける場合は、次の点を早めに考えておきましょう。

  • 年金収入で支払える家賃水準
  • 高齢者向け住宅や公的賃貸住宅の選択肢
  • 保証会社や緊急連絡先
  • 医療機関や買い物へのアクセス
  • 階段や段差の少ない住宅
  • 将来の住み替え費用

「家を買わない」という選択も、立派な住宅戦略です。

ただし、老後も現在と同じ家賃を無理なく払えるとは限らないため、資産形成と住み替え計画をセットで考える必要があります。

賃貸か持ち家かを一生決める必要はない

住まいの選択は、二者択一ではありません。人生の住まい方を三つの時期に分けて考えるのがよいです。

1.探索期

仕事、家族構成、住みたい地域が固まっていない時期です。

賃貸を活用し、複数の地域や間取りを経験します。

この時期に無理に住宅を購入すると、人生の変化に住宅が合わなくなる可能性があります。

2.定着期

仕事や家族構成がある程度安定し、同じ地域に長く住む理由ができた時期です。

持ち家を検討するなら、この時期が候補になります。

ただし、物件価格だけでなく、出口と家計の耐久力を確認します。

3.再設計期

子どもの独立、退職、介護、健康状態の変化によって、必要な住宅が再び変わる時期です。

持ち家を売却して小さな住宅へ移る、バリアフリーの賃貸へ移る、家族の近くに住むといった選択肢を考えます。賃貸から持ち家へ移り、その後再び賃貸へ戻ることもできます。

重要なのは、「持ち家を買ったら一生住み続ける」と決めつけないことです。

最終判断のためのチェックリスト

持ち家を検討している場合は、契約前に次の質問に答えてみましょう。

  • この地域に10年以上住む理由があるか
  • 購入後も生活防衛資金が残るか
  • 住宅ローン以外の費用を計算したか
  • 収入が減っても返済できるか
  • 子どもが増減しても使える間取りか
  • 災害リスクを確認したか
  • 管理状態や修繕計画を確認したか
  • 10年後に誰が買う物件なのか説明できるか
  • 売却価格が想定より下がっても生活できるか
  • 持ち家でなければ実現できない希望があるか

最後の質問は特に重要です。

持ち家で実現したい暮らしがなく、単に「家賃がもったいない」という理由だけで購入するなら、一度立ち止まったほうがよいかもしれません。

まとめ|家ではなく、暮らしに合う選択をする

賃貸と持ち家のどちらが得かは、ひとつの指標だけでは決まりません。

賃貸には、

  • 住み替えやすい
  • 大きな修繕を直接負担しにくい
  • まとまった現金を残しやすい

というメリットがあります。

持ち家には、

  • 長く住む場所を確保できる
  • 住まいを自由に変えやすい
  • 売却できる資産が残る可能性がある

というメリットがあります。

判断するときは、毎月の支払額だけでなく、

  • 何年間住むのか
  • 購入後に現金が残るか
  • 人生の変化に対応できるか
  • 将来いくらで売却できるか
  • どのような暮らしを実現したいか

を確認しましょう。

家は、買うこと自体が目的ではありません。暮らしを守り、人生の選択肢を増やすための道具です。深く根を張ることが安心につながる人もいれば、必要なときに移動できることが安心につながる人もいます。

周囲の価値観ではなく、自分の人生に合った場所に、自分に合った深さで根を張る。

それがマネーフォレストの考える住まい選びです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、住宅購入や特定の住宅ローンを推奨するものではありません。税制や融資条件は変更されることがあります。住宅を購入する際は、最新の制度、契約条件、災害リスク、建物状態などを確認したうえで判断してください。

まりぃ

本邦金融機関に8年間勤め、ディーリング・リスク管理等に従事。当サービス掲載内容の執筆・監修を担当しています。
執筆・監修:まりぃ(2級FP技能士/CMA)
最終確認日:2026年7月26日
監修内容:制度・統計・金融商品のリスク説明

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